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重なる手のひら 1. ライン、と呼ばれる街がある。 エリンディルと呼ばれるこの大陸の中原に存在する都市国家の一つであり、『遺跡の街』とも呼ばれる。 近隣7つの都市国家間で締結されたパリス同盟、その指導都市とされる一大勢力の盟主国である。 また、国王エレウォンドが元冒険者であったこともあってか、近隣の遺跡の発掘に力を入れており、街には多くの冒険者が滞在する。 踊る小鹿亭など、街に数ある酒場から彼らのにぎやかな声が絶える日はない。 そのラインの街は、今三日間に渡る大きな祭りの真っ最中。 街は人であふれかえり、そこら中に吟遊詩人や踊り子、曲芸師が闊歩し、人種も性別も国籍も関係なく、熱気と常ならぬ雰囲気が街全体を覆う。 そんな中で一人、町角に設置されている小さな円柱型のオブジェに腰掛けて、中央通りの人の波を見てため息をついている少年がいた。 赤毛のくせっ毛、まだあどけない少年ではあるものの、その腰には剣帯ときもち反りの入った細身の黒鞘―――東方の武器、カタナ―――がある。 いかにも旅暮らし、という彼のいでたちを見て、冒険者だとわからない人間は相当の節穴だろう。 ともあれ、祭りの見物客というにはやけにアンニュイなため息をついている少年。そんな彼に、声をかけるものがあった。 「……エイジ」 「あれ、フェルシアさん」 長く伸びた銀糸の髪を、ゆらゆらと柳の枝のように揺らしながら現れたのは、透き通るような白い肌を夜闇のローブから覗かせる、少女と言っても通りそうな年頃の娘。 しかし彼女―――フェルシアは、けして見た目どおりの年齢ではない。悠久の長きを生きる『銀の髪の』監視者、それが彼女の実の姿である。 そんな彼女に気安く笑いながら、少年―――エイジは話しかける。 「どうしたんです? 僕らにシグさんに言伝するように頼んだから、別の用事に行ったと思ったんですけど」 「……計算外の事態が起きた。 けど。結局今私は神殿に入れないから、あなたとアムに頼んで正解だった」 一介の少年にしか見えないエイジと、人類の監視者であるフェルシアがこうも気安く話すのは、彼らがほんの少し前までギルドを組んでいたことが要因である。 彼らの他にも、今名前の出たシグとアム、そしてもう一匹がそのギルドの人間であり―――とある事情により、そのギルドは事実上解散してしまっていた。 別れた彼らは別々の道を歩むことになったのだが、ちょっとした偶然で再会し、ちょっとしたお使いを頼まれたのである。 そのお使い―――かつてのギルドメンバーであるシグへの伝言―――に今のエイジの同行者であるアムが動くことはできても、彼はある事情により同行できない。 だからこそ、今お使い中のアムを待って、エイジはまちぼうけを食らっていたのだった。 エイジは苦笑しながら言う。 「今度はどんな悪いことしてるんです。わざわざアムを通さないと言えないことなんですか?」 「……悪いことをしているとは思っていないけれど。アムから、聞いていない?」 「『フェルシアからシグに伝言頼まれたからラインまで行くわよ』の一言だけですよ。あとはなにを聞いても答えてくれなくて」 そうノロケ混じりの返事を聞いて、フェルシアは無言のままふるふると首を振った。 「……アムが話さないのなら、わたしが話す必要はない。そもそも、あまり人にもらしていいことでもないから」 「僕だけ、仲間はずれですか」 少しだけ唇を尖らせて言ったエイジに、フェルシアは優しげな微笑を浮かべて答える。 「……アムがなぜ話さないのか、わたしはわかるから言うけれど。 それはきっと、アムの優しさ。あなたに直接関わることではないけれど、あまり気分をよくするものでもないから」 「優しさ、ねぇ……」 なにやら複雑そうな表情で考え込むエイジ。 わかってはいる。アムの挙動は女の子としてはかなり乱暴で、さらに強気である。が、彼女が気弱なところもある女の子であるとエイジにはわかってはいるのだが――― 生来の朴念仁気質もあいまってか、どこまでが本気でどこまでが照れ隠しなのか、長く付き合っている今でもいまいち判別がつきづらいのである。 そんな悩める少年にくすり、とほんの少しだけ笑って、フェルシアはさらに告げる。 「……最初は、アムもこの仕事を渋ってた。けど、一ついいことを教えてあげたら、行くって言いだした」 「いいことって、なんですか?」 「シグがこの日来るはずのラインでは……お祭りをやってるって」 悪戯っぽく笑うフェルシアに、頭に疑問符を大量に浮かべるエイジ。 その鈍感っぷりに内心呆れながら、彼女は続ける。 「エイジ。あなたは、クラン=ベルでも祭になんて参加したことはないでしょう?」 あ、と。エイジが間の抜けた声をあげた。 クラン=ベル。パリス同盟加盟都市のひとつであり、またの名を『水の街』という。エイジと旅の仲間アムの生まれ故郷である。 今現在、クラン=ベルは大きな川二つの合流する場所にある運河と水路の街となっているが、ほんの少し前までは砂漠の中の街であった。 十数年間魔族の陰謀により水が枯れ果てさせられていたのがその理由であるが、その陰謀に巻き込まれたエイジの父ガイアは水の街から水を奪ったといわれなき罪を受け、 その子であるエイジにも辛い生活が強いられた。 水により繁栄を迎えていたクラン=ベルは、その基盤を奪われ大きく衰退する。 人々の心を一つにするための祭りも、罪人の家族を交えることはなかったのだ。 そんなクラン=ベルも、エイジの立ち上げたギルド『のっとぎるてぃ』により再び過去の栄華を取り戻し、神官長代理のウェルチという少女の元復興の道をたどっている。 ともあれ。エイジはそんなわけでこれまで祭に参加したことはない。 それを知っていたアムは、エイジに祭を体験させてやるためにフェルシアの仕事を受けたのではないか、と彼女は言ったのだ。 エイジの表情の変化を柔らかな表情で見つめていたフェルシアは、中央通りにひときわ背の高い赤いメイジハットを見つけ、無表情に戻る。 「……ごめん。わたし、仕事の時間になったから。これで行く」 「へ? あ、はい」 反射的に返事をしたエイジに、フェルシアはもう一度だけぽつりとささやく。 「……エイジ。アムにお礼、しないと」 そう告げて遠ざかっていく魔法使いの背中に、エイジは両手を拡声器のように添えて、叫ぶ。 「フェルシアさんも、お気をつけてっ!」 声を背に、魔法使いは雑踏の中に入りこんでいく。懐からローブを取り出し、頭からかぶるところまではエイジにも見えたが、その後は人ごみの中に消えた。 2. 「お礼って言ってもなぁ……アムは何を喜ぶんだろ」 出店の屋台で買ったカバル焼きを一口。 しっとりとした卵の味のする柔らかな生地に甘酸っぱいベリーの味のする熱々のコンフィチュールが入っており、中々においしい。 ……なんか変な鳥の形をしているが、そこらへんは気にしない方がいいだろう。たぶん。 ともあれ。 これまで彼は祭りなどに参加したことはないわけで、いまいち勝手が掴めない。 とりあえず人の良さそうな店員の青年の言葉にほだされ、そんなに高くもなかったので一袋買ってしまったカバル焼きがおいしかったのは僥倖だったが、 今の彼の目的はアムへのお礼探しである。 しかしこれまで贈り物なんて気の利いたことをあまりした経験のない彼にとっては、エルクレストカレッジの入試問題なんかよりもよほど難しい関門として立ちはだかる。 下手なものを贈ったら軍隊仕込みの今や進化に進化を重ねた銃撃を受ける、なんてことになりはしないかと思っている彼の心中は必死である。 なにが欲しいかアムにたずねたら迷わず『金!』と答えそうな気がした。それは人間として間違ってる気がするので却下。 同じ女性として妹であるウェルチにたずねる、というのも考えたが今すぐたずねるのは限りなく無理だ。よって不可能。 あと彼が知っている女性は、神殿関係者で会うことの不可能なシルヴァ、場所のわからない上参考になる気のしないベネット、そも会えるとも思えない魔族のショコラ。 みんな今すぐ聞くことが不可能である人物ばかりだったわけで、アムが帰ってきたらすぐありがとうの気持ちを伝えたいエイジとしては参考になりえない。 ……正直な話。第三者から見ると聞けなくて正解だと思える面子しかいないあたり、エイジの女運の悪さが垣間見える。 閑話休題。 そんな悩める少年に、声をかける者があった。 「ちょっとちょっと、そこ行く冒険者さん」 真剣に悩んでいたエイジはその声で思索の海から現実に引き戻される。 呼びかけられたのが自分なのかもわからなかったが、声のもとをたどろうと周囲を見渡す。その彼に再び声がかけられる。 「そうそう。今きょろきょろしてる冒険者さん、あなたあなた」 声の方を振り向けば、そこにいたのはにこやかな笑顔を浮かべる長い金髪の女性の姿。 深い藍色のメイジハット、それと同色のコートとよく似た色の瞳。おっとりとした雰囲気のあるヒューリン。 『ブル』と書かれた看板のようなものがはみ出た大きなリュックを背負っているところを見ると行商人のようにも見えるが、 メイジハットや手に持つ杖を見る限り冒険者にも見える。 不思議そうな表情をしているエイジの顔を特に気にしていない様子で、苦笑しながら女性は言う。 「ちょっと寝坊しちゃって。お店出しにきたんだけど、どこに出店届け出しに行けばいいのか昨日確かめたのに道がこの人ごみでわからなくなっちゃいまして。 確か神殿に出しにいけばいいのまでは覚えてるんだけど、神殿までの道を教えてはもらえないです?」 「あ、商人さんだったんですか。神殿だったら、ここの中央通り沿いに歩いていくと、ラインでもう一つある大きな通りの神殿通りとぶつかるんで、そこを渡ったとこです」 「うわぁ、ありがとう~。 もう。せっかく新しい目覚まし時計買ったのに、また焼いちゃって寝坊しちゃったからどうしようかと……」 ほっとしたように胸を撫で下ろす女性。 やや不審な言葉があったものの、柔らかい笑顔を見る限りいい人そうである。 これまでまともな女性の知り合いのいなかったエイジ的にはこんな生き物が本当にいたことに涙があふれそうな気さえしてくる。 感動にじーん、と打ち震えているエイジを見て女性はその柔らかな笑顔をエイジに向け、言う。 「本当にありがとうございます。お礼、と言ってはなんですが、冒険者さんはなにかご入用なものはありませんか? 助けてもらったんですし、相互利益は商売の基本。普通のお値段よりも、ちょっと勉強させてもらいますよ?」 なんでも言ってください、と女性は笑顔でエイジに告げる。 初対面の人に言うことにためらいがなかったわけではない。 しかし。 正直なところ何をあげていいのかも、相談できる相手もいなかったエイジにとっては本当にありがたい申し出だったわけで。 エイジは、にこやかに笑う女性に、ことのなりゆきを話しだした――― 3. 「―――っていうのが、フェルシアの言ってたことよ」 「ふぅん……そうか。こりゃ大ごとになりそうだな。 アム、ご苦労さん。茶でも飲んでってくれ」 ライン神殿にある巡礼神官用寝所の一室で、彼らは話をしていた。 一人は軽めの装備を身につけた、鳶色の髪のヒューリンの冒険者少女―――アム。 もう一人は重厚な防具を身に纏う、三つ角ドゥアンの体つきのよい待祭(アコライト)―――シグ。 ともにギルド『のっとぎるてぃ』に一時身を置き、その功績により『クラン=ベルの四英雄』と呼ばれる内の二人である。 アムは出てきたログレス産高級発酵茶を口にする。 「んじゃ、遠慮なくいただくわ」 「それにしても。ずいぶんと優しいじゃないか」 「なにがよ」 「エイジの奴が神殿に近寄れないのをわかってて一緒に来たのは、お祭り騒ぎを楽しませてやるためだろう?」 シグがからかうようにニヤリと太い笑みを浮かべながら腕を組みながら告げる。 その声を聞いて一瞬で顔をトマト並みに赤くするアム。 「な―――なに言ってんのよっ!? あたしはフェルシアにどうしてもお願いしますアム様って言われたから仕方なく来ただけで、別にエイジのためとか、そんなんじゃないんだからねっ!?」 「そうかい。それは悪かった」 慌てふためくアムを、笑いながら横目で見つつシグも茶の器を傾けて飲む。 久しぶりに会う年下のギルド仲間は、素直じゃないのも変わっていないようである。 アムはむぅぅぅぅ、とむくれている。シグとしてもこれ以上アムを怒らせていらぬとばっちりを受けたくはないため、先ほどまでの話を反芻した。 「……しかし、また『粛正』の話とはな。神様はそんなに俺たちがお嫌いなのかね」 神に仕える者としてはありえてはならない発言。 それをふと漏らしてしまうほどに、今シグは重い話を聞いていたのだ。 『粛正』。神々の意思によって作られた『救世装置』。 世界を救う装置、といえば聞こえはいいが、やることといえば善し悪しを無視して全てを壊してやり直すための 装置(リセットボタン)だ。 『粛正』とその装置は、アムたちの元ギルド『のっとぎるてぃ』と少しばかり因縁があるのだ。 フェルシアからの伝言とは、新たな粛正が目覚めかけていることと、その粛正の鍵を握る者の監視を開始したこと。 そして、シグたちが遭遇した粛正の時とは違い、装置そのものを破壊できる可能性があるが、それをしていいかどうか迷っていること。 そしてこれが一番大きなことだが、最悪神殿側全てを敵に回す可能性があるため、敵対する覚悟を決めておいてほしいということ。 今現在カナン神殿神官長補佐の護衛役として冒険者から神殿仕えになっているシグには、先に言っておきたかったのだという。 そんなシグの重い口調を破砕するように、アムはやれやれ、と肩をすくめた。 「なに言ってんのよ、アンタは。あの日のこともう忘れたの?」 彼女が思い返すのは、『のっとぎるてぃ』の解散の日。 あの日彼女は一つの誓いを口にし、そしてそれを胸に彼女たちはそれぞれの道を歩き出した。 だからこそ胸を張って、彼女は言う。 「『粛正』の起こらない世界を作るために、みんなでがんばる。それがあたしたち『のっとぎるてぃ』の仕事でしょうが。 神様がどうとかはどうでもいいわ。『粛正』が起きるような状況を潰していくために、あんたも神殿であの女に協力してんでしょうに。 いまさら神さまがどうのなんて言ってらんないでしょ。あたしたちはその神さまに人間はやれるんだってこと見せつけるためにやってるんだから、ね?」 「……そいつはそうだ。まったく、ガラにもないこと言っちまったな」 苦笑しながら彼は言う。 若さというのは時に全てを凌駕するだけの勢いを持つ。 昔を振り返るだけでは前には進めないんだと、そう告げるように。そして、その考え知らずの無軌道に、シグも同意して彼のギルドに入ったのではなかったか。 だから。 「フェルシアに会ったら了解したって言っといてくれ。タイミング見計らってウチのボスにも言っとくよ。 ヴァンスターの方の妨害のことも含めてな」 「わかったわよ。ま、もし会ったらだけど。フェルシアもふらふらしててどこにいるかわかんないとこあるから」 空になり、机に置いたアムのカップを取って彼は言う。 「悪いが、もうすぐ神殿会議でな。ウチのボスの護衛の仕事が入るんだ。 人が来てごたごたするし、早いとこエイジんとこ戻ってやれ」 「そ、そうね。あいつこんな人ごみはじめてだろうから、人の波におぼれてないといいけど」 「あぁ。はじめて来る奴は結構人波に流されまくってエラいことになるからな、この町」 だから早く行ってやれ、と言われ、丸め込まれて釈然としない様子ながらもアムは部屋を出た。 シグはカップを流しに持っていきつつ、一言。 「若いってのはいいねぇ。 ……ま。若い奴らに負けてもいらんねぇ、か」 騒がしい足音が近づいてくるのを聞きながら、彼は上司の到着を待つ。ギルド仲間の忠告をどこまでどう聞かせるか、そんなことを悩みながら。 4. 「どこ行ってたのよ!」 待っていろ、と言われた場所にエイジが戻ってくると、そこにはすでに戻ってきていてご立腹のアムがいた。 体に染み付いた習慣により半ば反射的に謝る。 「ごめんアムっ! ちょっと道案内してて、それで……」 「ふん、あんたらしいけど。あたしがここで待ってなかったらどうするわけ?」 「ほんとにごめん、アム。あと……待っててくれてありがとう」 「なっ……ま、まぁいいわ。今日の夕飯代は全部あんた持ちくらいで許してあげる」 うん。と素直にうなずく機嫌がよさそうなエイジ。 ふん、と鼻を鳴らしつつアムはたずねた。 「なにかあったの? やけに機嫌よさそうだけど」 「そうかな、まぁそうなんだけど。 ……うん、あのねアム。これ」 言いながら、エイジは黒いなめし革に赤い小さな石と片翼の銀製アクセサリトップのついたチョーカーを手渡す。 虚をつかれたアムはそれに一瞬反応ができない。 反応がないことに少しびくびくしつつ、エイジは言う。 「これ、道案内した行商人のお姉さんが手ごろな値段で譲ってくれてさ」 「……あたし、に?」 「うん。アムにもらってほしい。その、お姉さんに色々と話は聞いたけど、僕が選んだんだ。 お祭り見せてくれた、そのお礼」 「あ、あんたに祭り見せるためとかじゃなくてっ! あたしはフェルシアに頼まれて仕方なく……っ!」 「それでも。嬉しかったからさ、受け取ってくれないかな」 照れたように笑って渡されたチョーカーをまじまじと見るアム。 白銀の翼は陽の光を鈍くはね返し、ちらちらと燈を灯したように輝く。緋色の石は艶鮮ときらめく。 動きを完全に止めていた自分を自覚し、顔が赤いのを自覚しながら彼女は言う。 「も、もらっておいて―――う、ううん。 その……ありがと、エイジ」 「よろこんでもらえたなら、よかった」 顔が赤くて直視できないのを自覚しながら、彼女はうつむく。 うつむいてしまい、視線が外れたその一瞬。チョーカーを持たない方のアムの手を取りエイジが歩き出す。 「ちょ、エイジっ!? なに、なんなのっ!?」 「せっかくお祭りに来たんだから、一緒に楽しもう! あっちにね、カバル焼きのおいしいお店が……」 「ま、待ってってばっ! ちょっと引っ張らないで―――」 そう言ったところで、はじめてのお祭りの告白もどきでテンションのおかしいことになっているエイジをアムは止められなかったわけで。 二人ともやけに顔が赤いまま、人波の中に消えていく。 そうして。 祭りの輪に、片翼に赤い石のチョーカーをつけた女の子と、片翼に青い石の革ブレスレットの男の子が、手をつないで加わった。 fin
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「おんしゃ、キレイな手ぇしちょるの~」 アハハ、と笑いながら坂本(担任)は、提出しようとしていたノートではなく俺の手首を掴んだ。 汚れた手のひら それは忘れもしない、俺が左目をやられた日。 思えば、あれが始めて人を殴った日だった。物心付いたときから会う人会う人に「目つきが悪い」と言われ、クラスメートにも怖がられていた。俺も俺で、いつも愛想もなく、人を寄せ付けなかった。が、手を上げたことはなかった。他でもない松陽先生と約束したからだ。 「晋助は、確かに目つきは鋭いですが、心根は素直で優しい子ですから」 「おれのどこが優しいんだよ」 小さな俺の頭に手を乗せながら優しい声で言う松陽先生に、俺は口を尖らせ拗ねたふりをして訊いた。すると松陽先生はふふっと笑った。ひどく穏やかで、優しい笑みだった。 「いつも、私の家の庭に来る野良猫にこっそりご飯をあげているでしょう。あんなにわかりやすくコソコソして、私が気付かないとでも?」 俺は恥ずかしくなって俯いた。顔が一瞬にして燃え上がるように熱くなったのを覚えている。 俺の頭を撫でながら、松陽先生は続けた。 「ですから、目つきが少々悪いからと言ってみんなに怖がられても、本当に悪い行いに走ってはいけませんよ。」 綺麗事だ。他の誰かの言葉なら、そう切り捨てただろう。だが松陽先生だけは特別だった。俺は黙って、こっくりと頷いた。 松陽先生が特別な存在になったのは、今思えば刷り込みのような物だったかもしれない。両親が遅くまで帰らない俺は、小学生になるかならないかの頃から毎日松陽先生のそろばん塾に通い、授業の後には夕飯も一緒に食べた。自分の家の三人がけのテーブルで一人、出来合いの食事を取るのに比べて、松陽先生の家で先生の家族や、他の塾生達と大勢で囲む食卓は楽しかった。 が、それでも俺が松陽先生に懐いたのは、単に餌付けされたからではない。と思う。先生は不思議な人で、他の誰にもないような暖かな光に包まれている。 おれは、その光を求めていたのかもしれない。 高一の夏休みのことだった。ちょうど盆に入った頃で、松陽先生の家族は出払っていて、家に残っているのは留守番の松陽先生だけだった。休み中は毎日朝から晩まで松陽先生の家に入り浸っていた俺は、その日も親が起きだす前に朝食を済ませ、松陽先生の家に向かった。 玄関の戸を開けようとすると、庭の方でゴソッと音がした。松陽先生は外に居るのかもしれないと音のした方に行ってみると、明らかに松陽先生ではない人影があった。ずんぐりとした体を家の傍に丸め、新聞紙とライターを取り出している。あっ、と俺は直感した。こいつは最近、近所に出没している放火魔だ、と。 「てめぇ、何してやがる」 俺が凄んでみせると、放火魔はヒッと喉を鳴らしながら、こちらを向いた。太った鼠のような醜い男だった。男はその場にまだ日の点いていない新聞紙をを捨て置いたまま、右手にしっかりとライターを握り、慌てて逃げ出した。俺はすかさず追いかけた。左手で男の肩にしがみつき、右手で握りこぶしを作って、思い切り男の後頭部を殴った。男はウォッっと呻き声を上げた。それから、ヨロヨロと振り向くと、俺の顔面めがけて右手を薙いだ。右手には、火の点いている状態のライターが握られていた。左目のあたりが焼けるのを感じた。俺は痛みに歯を食いしばりながら、渾身の力を込めて、もう一度男の顔面にこぶしを叩き込んだ。男は、ライターを取り落として逃げていった。追いかけようにも、左目があまりに痛くて追いかけられなかった。 俺は一先ず傷の手当てをしてもらう為、家に上がることにした。顔の左半分を抑えた俺を見るなり、松陽先生は俺の心配をして、慌てふためいた。救急箱を取り出してきて俺に応急処置を施すと、電話で近くの診療所の医者を呼んだ。医者が来るまでの間に事の顛末を話した。松陽先生は「私が気付いていなかったがためにこんな目に・・・・・・・すみません、私がもっとよく気を付けていれば」と、俺に何度も頭を下げて、泣きそうだった。そうしているうちに医者が来た。火傷を負った部分にべっとりとした薬を塗られ、頭にぐるぐると繃帯を巻かれた。火傷の痕はほとんど残らないが、左目はもう戻らないと言われた。 勿論、片目を失ったのは悔しかった。だがそれよりも、もっと大きなわだかまりが、俺の中に出来ていた。 医者が居なくなったあと、松陽先生も俺も、黙り込んでいた。 外では蝉が鳴き始めている。今日も暑くなるんだろう。 俺は、心の中の黒い渦を全て吐き出してしまおうと思った。 「先生」 俺が先生の方を見ると、先生は何かを思い出したように立ち上がり、台所へ向かおうとした。 「先生」 俺はもう一度、先刻よりもはっきりと言った。先生は、戻ってきて座り直した。 「先生、俺は」 俺は改めて口を開いた。 「今日、先生との、約、束、を、破りました」 一言一言、慎重に声にする。 「俺は、人を、人を殴りました」 言い終えてから俺が項垂れると、先生が笑う気配がした。驚いて顔を上げると、そこには、今にも泣き出しそうな顔で微笑む先生の顔があった。 「晋助、あなたは、私を、この場所を守るために、自分の犠牲も厭わずに戦ってくれたのでしょう。それは恥ずべきことではありませんよ」 頭の上に優しく、手が置かれた。 暖かい手だ。 俺の手には、こんな温もりがあるのだろうか。 それからしばらくの間、俺は先生の家に寄り付かなくなった。結果的には俺は悪くない。悪くはないが、それよりも人を殴ったということ自体が俺を後ろ暗い気分にさせた。松陽先生は、眩しすぎた。 「っせぇ。汚ねぇ手で触んじゃねぇ」 俺は坂本の手を振り払い、ノートを乱暴に教卓に置いた。「つれないのぉ」と口をとがらせる坂本を無視して教室を出た。俺は急ぐ。 そろばん塾があるから。 あとがき 今日は八月十日!晋ちゃんはっぴ~ば~すで~つ~ゆ~。 でもあんまり誕生日関係ありません。二月ごろに書いたはいいものの夏休みの話だから夏休みまでとっておこう、そういえば夏休みって晋ちゃんの誕生日あるじゃん!とそれだけの理由で今更UPしただけですから・・・。 あ、鳳仙祝うの忘れてた。
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てのひらのえいえん【登録タグ て チーム希望的天体観測 初音ミク 曲】 作詞:mao(チーム希望的天体観測) 作曲:ぺヱヤン(チーム希望的天体観測) 編曲:ぺヱヤン(チーム希望的天体観測) 唄:初音ミク 曲紹介 チーム希望的天体観測(メンバー:ぺヱヤン、山崎オレオ、達磨、mao、LOOK)の2作目。 3作目「ぼくらのレンタカー」と同日投稿。 イラスト:山崎オレオ 歌詞 (動画より書き起こし) 今までの景色が まるで違って見える 君と一緒なら 静かな街 ふたりで 並んで歩きながら 歌を 唄うんだ 子守歌のような 優しい声で 深く 染み入るように感じたんだ 君を 愛している つないだ手の ぬくもりから 瞳を閉じても 君を感じられる それだけで 泣きそうになるくらい 幸せになるんだ 鼻先が ふわりと 優しい香りをかいだ 君のスキップで 頬なでる 髪の毛 こっちを振り向いて 「置いてくよ!」 なんて 子どものような はずんだ声で 今までより 強く 強く 思ったんだ 君を 守りたい 幸せそうな 寝息をたて 肩に寄り掛かる 君がつぶやく寝言 その声が 狂おしくなるくらい 愛おしく 感じた 永遠がない なんてこと 知っているんだけれど それでも 笑っちゃうくらい 信じられる 君とだから つないだ手の ぬくもりから 瞳を閉じても 君を感じられる それだけで 泣きそうになるくらい 幸せになるんだ 愛おしくなるんだ コメント 名前 コメント
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手のひらの作り方 その1 ではある程度手の平を形づくることができたと思います。ここでは先の状態から指を形づくって行く方法を記入していきたいと思います。この作業は時間を置いてしまうとできませんので、連続の作業になります。 まずは先の状態の平手をさらにはさみで切って、大きさ等を整えて行きます。ここで大きさが小さくて合わないと思ったら、もう一度最初からやり直した方が良いです。まだ、この状態なら丸めて水につければ、もとのファンドの状態に戻ると思います。ほんの少し小さいなら、ローラーや指で手を潰す感じで大きくする方法もあります。 指、一本づつはさみで大きさを整えて行きます。指の長さもこの時点でしっかりと決める感じにしてください。 次に、先端が細いピンセット指を整えながら指に間接の跡をつけて行きます。つけ方は指の上下からピンセットでつまむような感じにすると跡がつくと思います。 指につけた跡を基準に指を曲げて行きます。ファンドは表面から乾いていき中は乾いてない状態なので、ピンセットでつけた跡からうまく指の様な感じに曲がって行くと思います。 親指は突き出ている部分が他の指と違っていますので、この段階でづらしておきます。 最後に指を全体に整えてから、完全に乾かします。 クラフツツール ストレートピンセット 74004 発売元 タミヤ メーカー タミヤ 売上ランキング: 33374 posted with Socialtunes at 2011/08/15
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指圧/花園を統べる姫君/突然の衝撃/テストフライト/余計な一言/滝浴び (しあつ/はなぞのをすべるひめぎみ/とつぜんのしょうげき/-/よけいなひとこと/たきあび) 指圧/花園を統べる姫君/突然の衝撃/テストフライト/余計な一言/滝浴び イベントカード 使用代償:白 キャラ1体を未行動状態にする。 「強がっても、私の技術の前には 無力だから」 「この庭はね、すべてミレイユの 絶対的支配下にあるのよ」 「…鈴!?」 「空の上って気持ちいい。 ずっと飛んでいられたらいいのに……」 「あっ さぁあああひいいいいいいぃ!!!」 「あ〜、大丈夫そうです。慣れてきたのかむしろ温かく感じられるようになってきました」 Version/カード番号 Ver.1.0/0115 Version/カード番号 Ver.AE1.0/0115 Version/カード番号 Ver.AP1.0/0115 Version/カード番号 Ver.AE3.0/0115 Version/カード番号 Ver.12.0/0115 Version/カード番号 Ver.19.0/0115 レアリティ R/P コメント
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90「手のひらの穴」 登場人物:仙石、仙石と堀の中学時代のクラスメイト男女、堀、レミ。 冒頭は仙石と堀の中学生時代の話。 クラスメイトに堀との仲を疑われる仙石。 「指を怪我した」と言う堀を心配して指を見た仙石だったが、指に芋虫(玩具)が乗っていて驚かされた。 堀が相手にしている男は仙石くらいだったらしい。 友達に、「仙石は男なんだから、本気を出されら堀は負ける」と言われる堀。 堀は仙石と腕相撲をして、手首2回ひねったらしい。 仙石は朝食を牛乳1杯で済ませたりもする。 この頃の仙石は、堀にテストの点と胸囲だけは勝っている。 仙石の胸は平らだが、堀の胸はえぐれている(仙石談)。 堀「高校になったらDはいく」宣言。 堀は学級委員長をしていた。 堀が掲示板にプリントを貼る際、下から仙石が画鋲を渡す。 手が滑り堀の足元に画鋲を落としてしまい、それを堀が踏みそうになったので咄嗟に手で庇う仙石。 仙石、堀に手を画鋲ごと踏まれて手の平の中心に画鋲が綺麗に刺さる。 椅子から落ちた堀が動かなかったので、死んだのかと焦った仙石。 レミに、画鋲の痕を「ホクロ?」と問われる。 現在の堀の胸は「Dはおろか…」状態。 コメント ←89「ゲームドリーマー」 91「浮気メール」→
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結局、張間みくの生き方は誰よりも一番賢い生き方なんだとサヤカは結論付けている。 問題に立ち向かったとしても、当事者だけでなくその関係者の、そのまた関係者の、と芋づる式で被害者は引き上げられていき、 最終的には自分と関係のない人物まで非難の対象とされてしまう。大衆による圧倒的な『力』により、敵は完膚なきまでに叩き潰される。 異常なまでに自己を謙遜し他者を気遣う彼女であれば、その結果を良しとはしないだろう。 そうして自分が望む答えを得られないくらいならば、事実を隠し、口を閉ざしている方がよっぽど平和だ。 不思議な力によって嫌でも誰かを傷付けてしまうんです、なんて喋ったところで誰も信じたりはしないだろう。 自分が我慢すればいいだけの話。だから、張間みくは生贄であることを望むのだ。 ぜんぶぜんぶ、ぼくのせい ごめんなさい、ごめんなさい そんな台詞を呪文のようにいつも呟くみくが、サヤカは嫌いだった。 自己犠牲を享受する彼女が嫌いだった。他人ばかり気遣う彼女が嫌いだった。可哀想な人間だと体言している彼女が、嫌いだった。 けれども、それ以上にサヤカは自分自身が大嫌いだった。みくが自らを生贄であることを本当は望んでいないのも、 誰かの助けを求めているのも、この現実を変えたいと願っているのも彼女が一番理解している。 けれどもみくを前にすると拒絶してばかりで、極力関り合いたくなかった。更に勝手にサヤカを同情する周りのせいで、 否応なしに主犯と仕立てあげられて、それを演じざるを得なくなってしまったのであった。 ___もしかしたら、張間みくは自分が望んでいる本当の姿なのかもしれない。 その答えを認めたくないからこそ、サヤカはずっと悪役を演じ続けていたのだった。 「サヤカちゃん!!」 「………」 張間みくの呼びかけに、ようやくサヤカは足を止めた。 しかし彼女は振り返らず、ただ全力疾走で乱れた息を整えているだけでみくの顔を見ようともしなかった。 サヤカとみくの間は、人間が一人か二人は入りそうな間隔が空いてる。 みくにとってその距離が、酷く遠くに感じる。 「…サヤカちゃ…」 「っ来んな!!」 近付こうとしたみくにサヤカは振り返り、叫んだ。 身体を震わせ臆したみくを、彼女は冷たい眼で見つめる。 「…でも、サヤカちゃん…ボク、キミに言わなきゃいけない事が…!」 「聞きたくない、…どうせ、いつもの『ごめんなさい』だろ?」 「っそれは違、」 「聞きたくないっつってんだろ、消えろよ。…今すぐ、目の前から消えろ…」 「………」 静かに声を震わせながら怒りを見せたサヤカ。 そんな彼女を前にしてみくは今にも泣き出しそうだったが、その場から立ち去ろうとはしなかった。 制服のスカートをきつく握り締め、眼に溢れんばかりの涙を浮かべても、 それでもサヤカから逃げ出すことも目を逸らすことも、しなかった。 大きく息を吸った後、みくは一歩、前に足を踏み出した。 「サヤカちゃん、あのね…」 「………」 「…ボク、ずっと、独りでなんとかしなきゃいけない、って思ってた。」 みくはまた一歩、踏み出す。 二人の足元は少し盛り上がった瓦礫の山のようで、彼女の足に当たった小さな石ころが横に転がって、地面へと落ちていった。 「だって、たくさんの人たちを傷付けたのはボクの『力』のせいで、ボク自身が償わなきゃいけないから、 誰かに頼るのは駄目なことだ、って…ボク、ずっとそう思ってた…。」 また一歩、また一歩。 みくは静かに語りながら、サヤカとの距離を徐々に詰めていく。 サヤカは険しい表情をしていたが、そこから動くことはなかった。 「でも、独りだけじゃ、何も変わらないんだ。ずっと抱え込んだままじゃ、ボクはずっと、ボクの『力』で人を傷付け続けるし、 何も、何も…変わらない…」 「………」 「それを、タガリ先輩や、アオサキ先輩が気付かせてくれたんだ…。それでね、それは、ホントだったんだ…!」 感情が昂ぶって、みくの目から涙が一筋流れ落ちた。 あの時省吾が差し出した手を自分は取らなかった為に、何も変わらなかった。 けれども今度は、彼らから差し出された手をしっかり掴んだ。決して離さず、決して己を責めずに。 だからこそ、彼女は自分が望む姿に変わることが出来たのだった。 それを教えてくれたのは、背の大きな柔道部の主将と、無口な先輩だった。 「ボク、毎日学校に行くのが楽しくなった。色んな人達とお話をするのが、楽しくなった。 …今までよりずっと、ずっと楽しくなったんだ!」 「だから、何?…んなの、あたしに関係ないじゃん…」 「関係、あるよ。」 「っ」 心の底を見抜かれてしまったと言わんばかりに、サヤカの身体が、びくり、と震える。 気が付けばサヤカとみくの距離は縮まっていて、みくから手を伸ばせばサヤカの顔に触れることが出来るほどであった。 少しだけ間が空いた後、みくはだらりと下がっているサヤカの手を取った。 包帯が巻かれた白い手、もう一度鍵盤を叩く事は難しいだろうと医者に宣告された手。 それをみくが労わるように、優しく撫でる。 「…あの時、サヤカちゃんがボクを庇ってくれて、ボクは怪我を負わなかった。 けれど、そのせいでサヤカちゃんの大事な手が…動かなくなっちゃったんだよね…」 「…そう、だよ…」 「サヤカちゃん、辛かったよね…悲しかったよね…」 「やめろよ、同情なんて…!」 「でも、でもね、ピアノ、また弾けるかもしれないんだ!」 「…は?」 「サヤカちゃんは、っ治す事をあきらめてるから、ピアノが弾けないんだ!」 「………!」 みくにそう指摘され、サヤカは思わず言葉を失ってしまった。 そうだ、結局サヤカは、自分の抱えているすべての問題に向き合おうとしなかったのだ。 自身の手についても、いじめについても、与えられた現実を受け入れるだけで、自らは何も変わろうとしなかった。 変えられないと、思っていたから。 変えて貰えるのを、ひたすら待っていたから。 「っふ…ふざけんな!!」 サヤカはそう叫び、みくに掴まれていた手を振り切った。 冷静を装う事も、悪役を演じる事も、何もかも忘れてサヤカはみくに感情をぶつけた。 「あきらめてるから?んなの当たり前だっつーの!!医者に治らないって言われて、 それでも治らないからあきらめてんでしょ!?どうすりゃいいのよ!!」 「っそれは、ボクにも分からない…」 「ほら!!言うのはでたら…」 「でも!!それを一緒に探そうよ!!一人じゃ、何も分からないから!ボクと、ボクと一緒に探そうよ…!!」 「!み、く…」 みくは泣きながら、震えた声でサヤカに訴えた。 サヤカはみくの口からそんな言葉が聞けるとは思っていなかった。 自分は彼女から最も恨まれる存在で、この場に相応しいのはもっと別の言葉だ。 それこそ、サヤカがみくに吐き続けていた今までの言葉こそ、自分に浴びせられる言葉で… 「…そ…っか…」 みくは、自分自身だったのだ。そして、死ぬべきも消えるべきも自分だったのだ。 そう気付いた時、サヤカは静かに涙を流していた。 「サヤカ、ちゃん…」 「み、く…ごめん、あたし…っあたし…」 「………」 寄りかかるサヤカをみくは優しく抱き締めた。 やっと彼女に寄り添う事が出来たのだ、とみくも涙を流しながら抱き締めていた。 「…やっと、仲直りだね…サヤカちゃん…」 「……みく…」 「いいの、…ね、これから、一緒に考えてこ…?」 「………」 抱擁を解き、みくはサヤカと顔を合わせると泣きはらした赤い目で笑いかけた。 みくの両手にはサヤカの手が握られていたが、今度は振り切られることはなかった。 「…みく、あのね、」 「ん?」 パァン 突然、サヤカの言葉を裂いて破裂音が響き渡った。 どこかで聞いたことがある、確か運動会の徒競走でスタートする時のあの銃声と似ている。 そんなことを考えた次にみくの視界に映ったのは、眼を見開いたサヤカだった。 「…え?」 彼女の胸には、じわり、と赤い花が咲き、そしてサヤカの身体はみくの横をすり抜けて倒れた。 一つ一つの動きが、みくにとってスローモーションのように感じた。 「サヤ、カちゃん…?ね、サヤカ、ちゃ…」 みくは座って、サヤカの肩を揺するが返事は返ってこない。 それどころか、サヤカの身体の下からじわじわと赤が広がっていく。 これは何だっけ、そうだ、血だ、でもなんで、そもそも銃声なんてどこから。 目の前で起こった出来事を追い付けない頭で必死に処理しながらも、みくはサヤカの名前を呼び続けた。 「サヤカちゃん!!サヤカちゃん!!?っやだ、ねぇ、サヤカちゃ……っひ!?」 ガシャン、と大きな音を立てて物陰から何かが出てきたのをみくは見つけた。 頭部はフルヘルメットに無数の穴をあけたような複眼式で、手には銃器のようなものを構えている。 それはみくの知る人物でもなければ、人間でもなかった。 「あ、…あぁ…!」 ソレと目が合うと、反射的にみくはサヤカの身体に覆いかぶさった。 けれども度重なる恐怖によって、そこから動くことは出来なかった。 (助けて、助けて…っ助けて…!!) 徐々に近づいてくる機械の足音を前に、みくはただひたすら祈り続けることしか出来なかった。 重なった手のひら (やっと、とどいた) (やっと、みとめられた) (はず、だったのに)
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今日は月に一度の中掃除。普通の掃除と大掃除の中間ぐらいの規模ってわけで。一人暮らしの時はやっていなかったのだが、天河石たちが来てからは……まぁ、その、珊瑚がうるさくてな。 「マスタぁー、終わったよー♪」 押し入れの中から出てくる天河石。どうしてこんなところに入っていたかって、中の整理を一番小さいのにやってもらっていただけだ。 「おっし、じゃあこの部屋は終わりだな。次は向こうの……」 「主、台所の清掃、終わったぞ」 「お、さすが珊瑚だ。早いな」 「天河石は?」 「お前も充分早いよ。よく頑張ってる」 子犬のような幼い顔つきでこちらを見上げてくる。こういう顔を見ると、どうも頭を撫でてやりたくなるんだよなぁ。 「えへへ~」 と、気がついたらこうして天河石の頭に手が行ってるわけだ。そして、こういうときの珊瑚の顔もまた……。 「珊瑚も撫でて欲しいか?」 「む、いや某は別に……」 「ふーん。まぁいいや、んじゃあ最後の部屋はみんなでやってしまうか……あ、風呂掃除が残ってたたか。俺そっちやってくるわ」 「手伝うよぉ?」 「ドレス濡れたら嫌だろ? 俺一人で充分だから、お前らは二人で残りの部屋を頼む」 「はーい」 主に言われた通り、残りの部屋の掃除を進める某と天河石。残りの部屋と言っても、あとは皆で過ごすことの多い居間のみ。それほど時間が かかるわけではない。 しかし、先の主の言葉……某も撫でて欲しいか、だと? ……頭を、撫でる? そういえば某、今まで頭を撫でて貰った記憶が……。 「……天河石」 「なぁに、珊瑚お姉ちゃん?」 「頭を撫でられるときは、どういう感じなのだ?」 「ふぇ? んーと……ごしごしーってされる感じかなぁ」 ごしごし……乾布摩擦みたいなものなのか? だとしたら体にはよさそうだが。 「でねー、マスタぁーに撫でてもらうとぉ、幸せな気持ちになれるんだよー」 「幸せ?」 頭に手のひらを乗せられることで得る幸せ……そういう互いの触れ合いは嫌いではない。だが、やはり某にも恥ずかしいものはある。主の手で頭を触れられる……そんな子供っぽいことはちょっと、な。 「そっち終わったか?」 風呂掃除も一通り終わり、飲み物片手に二人の元へと戻る。 「終わったよー」 「天河石が頑張ってくれたからな、早く終わった」 「さすがだな、二人とも。ほら、お疲れさん」 二人にそれぞれ飲み物を手渡す。天河石にはコーヒー牛乳、珊瑚には麦茶。一応二人の好きな物……だと思う。 「わーい♪」 「かたじけない」 「いいっていいって」 俺はもちろんビール……なんてわけには行かず、天河石御用達のコーヒー牛乳を一気飲み。天河石が来てから、苦手だった甘い物を克服してしまった気がする。もちろん酒も好きだけど。で、コーヒー牛乳の一気飲み。もちろん腰に手を当てて、頭は45度で固定。そして一気に流し……。 「……どうしたんだ、珊瑚?」 「え、いや……ゆっくり味わって飲んだ方がよいぞ」 「いやいや、こうして一気飲みするのもまたいいモンだぞ? 何なら珊瑚も……って、宝石乙女にそんなことやらせちゃダメか」 「当然だ」 相変わらずだなぁ、珊瑚は……って、まだ珊瑚の視線を感じる。一体何なんだ? 「……まだ何かあるのか?」 「えっ、あ、いや別に……なんでもない」 何でもない奴がそんな慌てて目を逸らすかよ……。 「そ、それより、今日は天河石がよく頑張っていたんだぞ。いつもの奴はしないのか?」 「いつもの? いつものって何だ?」 「あ、いや……先ほど褒めた割には頭を撫でてなかったからな、それが気になって」 「頭? あぁそういや……ほほぉ」 なるほど、そういうことか……お、珊瑚顔赤くなったぞ。俺が気づいたことを察したみたいだな。 さて、こうなるとからかってみたくなるのが人間の性ってモンだ。 「マスタぁー、何してるのぉ?」 「おぉ天河石か。お前掃除頑張ったんだってな」 「お姉ちゃんも頑張ったよぉ?」 「そりゃあ、珊瑚はお姉さんだからなぁー」 いつものように天河石の頭を撫でる。もちろん純粋に褒める意味で撫でているが……それ以上に珊瑚の反応が気になる。 「えへへー」 「……っ」 我関せずとそっぽを向いてはいるが、横目で天河石の顔を確認している。 「天河石の髪は綺麗だなぁ」 「お姉ちゃんも綺麗だよー。あっ、さっきねー、お姉ちゃんが頭撫でられるのはどんな感じかって言ってたよー」 「あっ、こら天河石……ーっ」 おぉっと、天河石の思わぬフェイント攻撃だ! これには百戦錬磨の珊瑚も相当効いたようだな。もう俺と顔を合わせられないほど赤くなっている。しかし珊瑚の照れる表情なんて初めて見たな。しかもかなり可愛いぞ。 「なんだよー、気になってたんだったら俺に言えばいいのにぃー」 「そ、そ、某は……うぅー」 さすがにいじめすぎたか、反応が痛々しくなってきた。もうこちらを見てないし……よし、じゃあそろそろだな。俺は珊瑚の隣に立ち、桜色の髪の毛に手をかざす。 俺の手のひらが、珊瑚の頭を軽く撫でた。 「っ!?」 まるで猫のようにその場から飛び退き、俺と間合いを取る珊瑚。 「おいおい、そんな警戒するなよぉ。ちょっと撫でるだけだって」 「そそ、某に触るなっ!」 「声が上ずってるぞー」 「い、いいいつも通りだっ! 某はうろ、うろたえてなどっ!」 あーあ、完全にテンパらせてしまった……ここまで照れ屋だとは、少し反省。 「ははは、悪い悪い、さすがにいじめすぎたな」 「主はおかしいぞっ、さっきから……なぬ、いじめ?」 「そ。だってあまりにも珊瑚の反応がおかしくてなぁ」 「いじめはダメだよ、マスタぁー。でもお姉ちゃん面白かった」 天河石は純粋に面白かっただけだろう。でもまぁ、同じ意見なので二人で笑い合う。いやぁ、可愛い珊瑚を見ることができてよかったよかった。 「……ふ、ふふふ……そうか、からかっていたのか……某を、か……ふふ……許さん」 「え……?」 慌てる珊瑚は可愛かったが、キレた珊瑚はマジで怖いということを痛感した。 「ってぇー……まさか斧の腹で殴ってくるとは」 「某を侮辱するからだ! 今回ばかりは主とはいえ簡単に許すわけにはいかぬぞ」 「へいへい。で、どうすれば許してくれるんだ?」 「ん、それは……」 あごに手を当てて考え込む珊瑚。そしてわずかに頬を赤くして……。 「……なら、からかうのではなく……ちゃんと褒める意味で、その……撫でてくれ」 「へ? まぁ、うん、いいけどよ……フェイント攻撃はなしだぞ?」 「それは某をからかった罰だっ」 「わ、分かった分かった……」 まぁ、俺も悪ふざけが過ぎたから反省しよう……。 「……ダメ、か?」 怒ってるような照れてるような、そんな珊瑚の横顔。 ……結論。お願いをするときの珊瑚は、どんなときに見せる顔よりも可愛い。だから俺はもう……。 「全然OK。100回でも200回でも撫でてやるっ」 「え、主何を……うわわっ、あ、主っ、物事には限度がっ」 「おぉ、見た目通りの綺麗な髪じゃないか。さらさらだな」 「そ、それは……そうか、それならいい……」 結局、珊瑚が頭を撫でさせてくれたのは1分ほどだった。 「今回のことで、主が変人だという事がよく分かった」 「アレはあくまで勢いだって」
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本のかわいい女の子フィギュアを作ろう!では手を木部用パテで作っていましたが、私の場合はある手程度の大きさまでならファンドで充分いけると思います。楽だといのが一番の理由です。もちろんファンドで造形すると折れやすいというのはありますが、私の中ではこの楽だというのが非常に大きく、例え折れても、間違った形でやり直しになったとしても、ファンドなら簡単に作り作りなおすことができます。(*1)。指にステンレス線などで、あらかじめ手の形を作り出してやる方法もあるようですが、私の場合ですが、あとで指のステンレス線がファンドの表面に出てきてしまいやりづらくなってしまい、自分には向いていないと思っています。 今回はある程度、形を作った手を基本に反対側の手を作っていきます。ファンドを下記の画像のような形に整えます。ファンドの硬さは重要で練った時にあまりベトベトしない状態のファンドを使用します(*2)。また、硬さは均一な状態のモノを。 今回はこのような手を合わせたような形を作ろうと思います。 逆の手を作るということで、ある程度できていた手を当てて大きさを見ています。手を上から押し込んで、指の長さの印を付けています。 印を見ながら、小さなはさみでファンドを切り込んでいきます。まずは基本となる5本の指から切り込んでいきます。 このままでは切れ込みを入れた指が太いので切れ込みを指の左右に入れていきます。この作業で指の谷間を作っていきます。(*3)画像では沢山入っていますが、そんなに沢山入れることはないです。ここで重要なのは手は大きめに作って、小さくしていくということです。 切れ込みを入れた余分なファンドを先端の細いタミヤのピンセットなどで取っていきます。この時に指を取らないように注意します。 あとはピンセットなどで形を整えて乾燥させます。 手のひらの作り方 その2へ
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1 2 純「手のひらサイズ!」 2010/07/20 http //yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1279618053/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る よー分からん -- (名無しさん) 2013-11-12 01 19 44 先生それでいいのかwwww 純ちゃん可愛い! -- (名無しさん) 2011-11-12 18 10 41 圧倒的適応力 カケラも悲惨さがねぇwww -- (名無しさん) 2011-08-22 13 28 01 先生「ずいぶん小さくなったな」 おいww -- (名無しさん) 2011-07-17 20 03 57 ムギちゃんの頭はいつもエロ桃色WWW -- (名無し) 2011-07-11 08 08 58 なんでそこで寝ようと思ったよ?w -- (名無しさん) 2011-04-23 01 26 46 え、純って最後は唯の胸に埋もれてた…んだよな? -- (名無しさん) 2011-03-21 19 23 24 ムギ…「ちょうど良いサイズね」って何を考えていた… -- (名無しさん) 2011-03-21 19 12 25 あぃら -- (名無しさん) 2011-03-21 18 35 20 先生の適応力が高すぎるw -- (名無しさん) 2010-12-27 01 32 44